60代は、暮らしのリズムが変わる時期です。仕事の第一線から少し離れる方もいれば、まだまだ現役という方もいます。旅行や習い事に出かける機会が増える方、家族の集まりや式典が続く方。行き先の顔ぶれが変わると、必要な服も変わってきます。
この記事では、60代のファッションを「暮らしのどの場面に着るか」という視点から整理します。そのうえで、実際に選ばれているブランドの傾向と、着ていてラクに過ごせるアイテムの選び方をまとめました。
何歳ならこう着るべき、という決まりはありません。ここに書くのは、選択肢を増やすための材料です。読んだうえで、自分がやりたい方向を選んでいただければと思います。

60代の服選びで出てくる変化
行き先の種類が変わる
毎日の通勤がなくなると、スーツやジャケットの出番が減ります。かわりに増えるのが、こんな場面です。
- 友人との食事会や同窓会
- 国内外の旅行、日帰りのバス旅
- 習い事、地域の集まり、ボランティア
- 子どもや孫の行事、法事や式典
- 近所への買い物や散歩
この幅の広さが、60代の服選びを難しくする一因です。きちんとした場と普段の場の両方に対応できる服があると、クローゼットが軽くなります。
体感の変化にどう合わせるか
- 重いコートを長時間着ていると、肩や首が疲れる
- 後ろにファスナーがある服は、一人で着脱しにくい
- 暑さと寒さの感じ方が以前と変わり、体温調節が難しい
- ウエストの位置が決まらず、パンツ選びに悩む
- 店頭で自分に合うサイズが見つかりにくい
これらは、服の選び方で解決できるものがほとんどです。重さが負担なら軽い素材に替える。着脱が大変なら前開きの形にする。体温調節が難しいなら、重ねて脱ぎ着できる構成にする。できないことを数えるのではなく、条件に合う形を探すという順番です。
60代に選ばれているブランドの傾向
百貨店で展開されているブランド
| ブランド | 雰囲気 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| レリアン | 上品でスタンダードなエレガンス | 会食、式典、旅行先での外出 |
| 組曲 | やわらかいエレガントカジュアル | 普段着から少し改まった場まで |
| 自由区 | クラシックで女性らしい印象 | 集まり、行事、おでかけ |
| 23区 | 都会的でシンプルなベーシック | まだ仕事を続けている方の通勤 |
| J.PRESS LADIES | きちんとした落ち着き | 式典、来客のある日 |
百貨店ブランドが選ばれる理由は、素材と仕立てにあります。縦横に伸びるストレッチ素材のパンツのように、見た目はきちんとしているのに動きやすい、という商品開発が進んでいる点も支持されています。
価格帯は単品で1万円台から数万円という幅があり、シーズンや素材によって変わります。具体的な金額は各ブランドの公式サイトでご確認ください。

通販を活用するという選択
店舗まで出かけるのが負担な場合や、近くに品揃えのある店がない場合は、通販が現実的な選択肢になります。ベルーナ、セシール、ニッセンといった通販ブランドは、サイズ展開が幅広く、価格帯も抑えめです。
通販を使うときのコツは、実寸表示を必ず確認することです。SやMといった表記はブランドによって違うので、手持ちの服を平置きで測り、その数値と比べるのが確実です。肩幅、身幅、着丈、袖丈の4つを測っておくと、選ぶ精度が上がります。
普段着の土台になるブランド
すべてを百貨店ブランドで揃える必要はありません。ユニクロや無印良品は、素材の選択肢が増えており、インナーやカットソー、パンツの土台として使いやすくなっています。価格帯を混ぜて組み合わせることは、まったく不自然ではありません。
60代で出番の多いアイテム
- 前開きのカーディガン:体温調節がしやすく、着脱もラク。ミドルゲージのウール混が扱いやすい
- ストレッチ入りのテーパードパンツ:ウエストの一部がゴムだと、長時間の移動でも負担が少ない
- 軽量素材のコート:中綿入りやウールナイロン混なら、肩への負担を抑えられる
- とろみ素材のブラウス:肩の張りが出にくく、一枚でも羽織りの下でも使える
- ミモレ丈のIラインスカート:スリット入りだと歩幅が取れる
- 3cm前後のローヒールパンプス:安定感があり、式典にも使える
- 大判のストールやスカーフ:顔まわりに色を足せて、冷房対策にもなる
特に前開きのカーディガンは、60代の日常でよく使われるアイテムです。頭からかぶらずに済むので髪型が崩れず、暑くなったらすぐ脱げます。旅行のときも、機内や車内での温度差に対応できます。
もうひとつ挙げたいのが、シルクやウールのスカーフです。首元に一枚足すだけで顔まわりが明るく見え、同じ服でも印象が変わります。畳めば場所を取らないので、旅行バッグに入れておくと役立ちます。

色との付き合い方
「落ち着いた色ばかりになってしまう」という声はよく聞かれます。紺やグレー、ベージュは合わせやすく、失敗が少ない色です。ただ、上下ともに同系色でまとめると、全体の印象が沈んで見えることがあります。
手を入れるなら、顔に近い場所です。スカーフ、ストール、ネックレス、あるいはトップスの一枚。顔まわりに明るい色を置くと、同じ服でも印象がはっきり変わります。
取り入れやすいのは、白、生成り、ライトグレーといった明るい無彩色。そこから、青みのある薄いピンクや、くすみのある水色、からし色といった色に広げていくと、抵抗なく試せます。年代によって使ってよい色が決まっているわけではありません。着てみて気分が上がる色が、その人に合う色です。
旅行や行事の日の服選び
旅行では重ねられる構成にする
移動中の乗り物は冷えることが多く、屋外は暑いということもあります。薄手のカットソーにカーディガン、その上に軽いアウターという3層構成にしておくと、その場で調整できます。荷物を減らしたいときは、同じボトムスにトップスを替えるだけで印象が変わるように組んでおくと便利です。
靴は、履き慣れたものが一番です。旅先で新しい靴をおろすと、靴ずれで一日が台無しになることがあります。クッション性のあるスリッポンや、ソールの柔らかいスニーカーだと歩く距離が伸びます。
式典や法事の日の準備
急に必要になることが多いのが、改まった場の服です。黒やチャコールのワンピースと、共布のジャケットが一組あると安心できます。数珠やふくさ、黒のフォーマルバッグも一緒に保管しておくと、当日に探し回らずに済みます。
フォーマル一式は、季節の変わり目に一度着てみて、サイズと状態を確認しておくと安心です。当日の朝に合わないと気づくのが、いちばん困る場面です。
小物で印象を整える
バッグは重さを基準に選ぶ
本革のバッグは風合いが良い一方、中身を入れる前からそれなりの重さがあります。長時間持ち歩く日は、軽量のナイロン素材や、やわらかい羊革のバッグのほうが体への負担が少なくなります。
持ち方も選択肢です。手持ちだけでなく、肩に掛けられるショルダーストラップが付いているタイプなら、その日の荷物量に合わせて変えられます。旅行や長い外出には、両手が空くリュックという選択も現実的です。
アクセサリーは大きさより配置
ネックレスは、鎖骨のあたりに落ちる長さのものだと、首元がすっきり見えます。長めのチェーンに小ぶりのペンダントを合わせると、縦のラインができて全体が軽やかにまとまります。
耳元は、揺れるタイプよりも、耳たぶに沿う形のほうが顔まわりが落ち着きます。もちろん、揺れるデザインが好きならそれで構いません。好みを我慢する必要はどこにもありません。
眼鏡もコーディネートの一部
眼鏡をかけている方にとって、フレームは顔まわりでもっとも目立つ小物です。服の雰囲気に合わせて2本を使い分けている方も少なくありません。フレームの色を服の差し色とそろえると、まとまりが出ます。

服を長持ちさせる手入れと保管
ニットは畳んでしまう
ニットをハンガーに掛けたままにすると、自重で肩が伸びてしまいます。畳んで棚に置くのが基本です。防虫剤を使う場合は、直接生地に触れない位置に置くようにしましょう。
コートはシーズン後に一度手入れする
ウールコートは、しまう前にブラシをかけてほこりを落としておくと、次のシーズンに気持ちよく着られます。厚みのある木製ハンガーに掛けると、肩の形が崩れにくくなります。
毛玉は早めに取る
ニットやカーディガンにできる毛玉は、放置すると生地を傷めます。毛玉取り器を一台持っておくと、着るたびの手入れが数分で済みます。摩擦の起きやすい脇や袖口を重点的に見ておくとよいでしょう。
買い物で気をつけたいこと
年代を問わず、通販や訪問販売に関する相談が寄せられています。とくに、電話や訪問で強くすすめられて契約してしまうケースには注意が必要です。契約に関する一般的な情報は政府広報オンラインや消費者庁が発信しており、困ったときの相談窓口は独立行政法人国民生活センターで案内されています。
その場で決めずに一度持ち帰る。この一つの習慣だけで、多くのトラブルは避けられます。
60代のファッションに関するQ&A
デニムを履いてもよいのでしょうか
もちろんです。厚みのある生地でストレートやテーパードの形を選び、トップスをきれいめのブラウスやニットにすると、食事の場にも合わせられます。ストレッチが入ったものだと、座っているときの負担も少なくなります。
スニーカーはカジュアルすぎませんか
革素材や、装飾の少ないシンプルなデザインのスニーカーなら、きれいめの服にも合わせやすくなります。歩きやすさは何より大事な要素です。長く歩く日に無理をする必要はありません。
店頭でサイズが見つかりません
ブランドによって、同じ表記でも実寸がかなり違います。手持ちの服を平置きで測っておき、その数値に近いものを探すと確実です。サイズ展開の幅が広い通販を併用するのも有効な手段です。
髪型が変わったら服も変えるべきですか
変えなければならないわけではありません。ただ、髪を短くしたときは首まわりが見えやすくなるので、襟元の開き具合を少し見直すと収まりがよくなることがあります。スカーフを足すという選択肢もあります。
孫と出かける日の服はどう選べばよいですか
動きやすさを最優先にして構いません。しゃがむ、抱き上げる、走るといった動作があるなら、ストレッチの効いたパンツと、汚れが目立ちにくい色のトップスが現実的です。家で洗える素材を選んでおくと、気兼ねなく過ごせます。
クローゼットに服はあるのに着るものがありません
これは、組み合わせの相手が足りていない状態かもしれません。一度すべて出して並べてみると、トップスばかり増えていた、羽織りものが足りなかった、といった偏りが見えてきます。足りない役割を1つか2つ埋めるだけで、着られる組み合わせが一気に増えることがあります。
まとめ
60代のファッションは、暮らしのどの場面に着るかを起点に考えると整理しやすくなります。レリアン、組曲、自由区、23区、J.PRESS LADIES といった百貨店ブランドは、素材と仕立てに配慮したアイテムが揃っています。そこに通販ブランドやユニクロ、無印良品の土台アイテムを混ぜても、まったく問題ありません。
前開きのカーディガン、ストレッチ入りのパンツ、軽量素材のコート、そしてスカーフ。この4つがあると、多くの場面に対応できます。選ぶ基準は、今日の自分が心地よく過ごせるかどうか。それ以外の物差しは、必要なときにだけ持ち出せば十分です。


